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ナマステ!
標高4,130mまで登った7泊8日のヒマラヤトレッキング体験記。
前回までの体験記はこちら。
今日の目的地は富士山とほぼ同じ高さの標高3700m。
果たして無事目的地まで到達できるのか?
歩く時間はたった4時間なのに、朝7時に出発する理由
いよいよ今日はM.B.C。
マチャプチャレベースキャンプ。性なる山、じゃなくて聖なる山、魚の尻尾。
標高も3700mで富士山とほぼ同じ高さまで登ることになる。高山病も心配だ。
なのに昨日の夜は全く寝付けず、結局0時過ぎまで起きてしまった。
定かではないけど恐らく身体が疲れ切っていなかったのと、標高が3000m近くになったことが原因だろう。
標高が高くなるほど人はなかなか眠りにつけなくなるらしい。おおー怖い。
結局昨日はシンガポール人のお兄さんと相部屋だった。
とても感じのいい人で安心した。
そんなシンガポールのお兄さんは20時過ぎにはぐうすか寝ていたので、標高が高くなるほど寝れなくなるってのは彼には関係ないらしい。
朝ご飯を食べる。
トーストとオムレツをずっと食べてきたけどメニューになかったので、今日はチーズサンドイッチを食べることにする。
もちろんネパールのミルクティー、チーヤは変わらず飲む。
朝7時に予定通り出発。
目的地のM.B.Cまでは所要時間4時間ほどだから11時には着く。
じゃあなんでそんなに早く出発するんだって言われそうなので、理由を説明しておく。
まず朝早く出発すると、人があまりいなくて歩きやすい。
今は宿が満室になるほどの混みようなので当然トレッキングに来ている人たちがたくさんいる。
そうなるとお昼の時間帯は歩きにくいのが容易に想像できると思う。
あと朝早くだと気温が高くなくて汗をかかなくていい。
昼頃だと日差しも強いので消耗するし、汗ビショビショになりながら歩くことになる。平地であればなんら問題ないが、ここは標高3000mの山奥だ。ホットシャワーは有料だし、洗濯だって簡単にはできない。
さらに、朝早く出て目的地に早く到着することは高地順応のためにも大切だ。
トレッキングで怖いのは高山病だ。
どんどん標高が上がっていくので、必然と高山病にかかるリスクも高くなっていく。
そのリスクを避けるためにも、昼頃についてゆっくり目的地で過ごすのと、夕方についてただ寝るだけなのでは全然高地順応に当てられる時間が変わってくる。
というごもっともな理由を幾つか並べてみたが、本当のところはゆっくりする時間が好きだからだ。
本を読んだり、考え事をしたり、ガイドや他のトレッカーと話す時間は面倒くさがり&体力なしの僕にとってはトレッキングと同じくらい楽しい。
トレッキングで5時間くらいしんどい思いをして歩いた後、適度な疲れと達成感を得られる。
だから、ゆっくりする時間が心地よすぎるのだ。
ただ山を登るだけじゃない、トレッキングの魅力
なんか色々語ってしまったので、話をトレッキング戻そう。
天気は快晴。昨夜も雨が降ったが、朝になるといつも晴れてくれる。ありがたい。
昨日は2時間半しか歩いていないので、もちろん筋肉痛もなし。
快調なペースで歩いていく。このヒマラヤの大自然を早朝に楽しめるなんて本当に贅沢だなとか思いながら、足を前に進める。
まだまだ緑が続いているけど、少しずつ大きな木が少なくなってきている。
そう思うと、ヒマラヤがどんどん近づいてきていることを体感する。
1時間半くらい歩いて中間地点のデウラリに到着。
いよいよ標高も3000mを超えて、3200mまで到達した。
太陽がまだ上がりきっていないのと、標高が上がってきたこともあって凍えるように寒い。
ゲストハウスで休んでいると、2日目のジヌの地獄の階段登りの時に会ったおばちゃんと再会。
途中何度か会っていたけどそういえば、デウラリでゲストハウスやってるって言ってたので納得。
陽気なおばちゃんでかわいらしいお孫さんを連れていて、ほっぺにチューするなど溺愛していた。
こうやって何回も同じ人に出会えるのも、このトレッキングの面白いところ。
各地点に宿なんて数個しかないし、ルートやペースだって大体一緒だ。
だから前に別の宿で出会ったトレッカーと、また別の宿で会うことは多々ある。
不思議なもので、見知らぬ人でも何回か会うとなぜか親近感を湧くようになる。
個人的には、道中で何回か会った、小さいスペイン人のおじさんが中でも印象的。
このおじさん、全く英語が話せない。それでも、このおじさんを中心に輪ができていて、何度も爆笑の渦を巻き起こしていたのだ。
あれは英語を話せない日本人にはぜひ見習ってもらいたい。陽気さと片言の英語さえあればなんとかなるのだ。
前も後ろも圧倒的な景色。これがヒマラヤトレッキングだ
寒さが限界なので、また再び歩き出す。
いよいよヒマラヤの麓、M.B.Cまでもう少し。
しばらく歩いていると、目の前の景色が変わった。
待ち望んでいた圧倒的な景色が目の前に広がっていて、興奮を隠せない。
ネパールに来て今まで何度もヒマラヤを見てきたけど、この距離で見ると感動が違う。
僕が持ってるiPhone5sだとなかなかうまく写真が撮れない。
そう思うと、しんどい思いをして重たい一眼レフを持ってきて本当によかった。
実はこの一眼レフを持ってくるかは最後の最後まで迷っていた。
何せ重い。1に重くて、2に重い。3,4がなくて5に重い。
協力隊の研修所で同期のみんなが買うということになり、完全に流されて買ってしまった一眼レフ。
みんなが持ってるから欲しい。
まさか26歳にして、小学生がゲームを欲しがって言うような言葉を吐くとは思いもしなかった。
でもたまにはみんなが持ってるから自分も買うに乗っかるのもいいもんだ。
流されて買ってしまったあの時の僕を褒めてあげたい。
そんなわけでその一眼レフで写真を撮りまくり、自然と立ち止まるのでちょうどいい休憩になる。
休憩しながら後ろを振り返って見たときの景色も最高だ。
前は前でヒマラヤの美しい雪化粧が見られるのに、後ろは後ろでまた壮大な景色。
超贅沢。
学校の教室で、クラスのかわいい子No.1とNo.2に挟まれたかのような気分。
こんな壮大な景色を見ながら、1歩ずつ目的地に向かって進んでいく。
気分は「神々の山嶺」の羽生丈二。でも身体が全くついていかない老人のような僕
デウラリを出て2時間、雲で目の前に広がっていたヒマラヤが完全に見えなくなる。
それと同時に、先の見えない登り道が続く。
標高も3500m近いからか、坂道が尋常じゃなくしんどい。
全然たいしたことのない、緩やかな登り道なのにハンパなくきつい。
20m登っては一息ついて休まないと前に進めない。
何せ、標高が富士山と同じくらいの場所にいるのだ。
酸素濃度は地上の約60%しかない。
自分が老人になったかのように、すぐに息が切れてしまう。
自分が70代、80代になったときにどれだけ体力がなくなるかを体験したかったら、ぜひヒマラヤトレッキングに行こう。
おじいちゃんやおばあちゃんが歩くのがしんどいって言ってるのはこういうことなのかもしれない。
そう思ったら、亡くなったおじいちゃんが歩いて5分のところでも、車を使いたいと言っていた気持ちがなんとなく分かった。
前後にいる他のトレッカーたちもかなりきつそうだ。
前にいた中国系の女子2人なんか死にそうな顔をして登っている。
それに比べたら自分はまだまだ大丈夫だとちょっと安心する。
ちょうどこのトレッキングの中で、小説「神々の山嶺」を読んでいる。
今年、岡田准一、阿部寛で映画化もされた作品だから知っている人も多いはず。
この小説はエベレスト登頂を目指す羽生丈二という男のカッコよすぎる生き方を描いた作品。
読んだことのある人なら分かるだろうけど、胸が熱くなるような小説だ。
自分の生き方を改めて問われた人は少なくないだろう。
そんな羽生丈二の物語を読んで、影響されやすい僕が影響されないわけがない。
ふと「神々の山嶺」を読んでいたことを思い出し、自分を羽生丈二だと思って歩き始めたが、一瞬で現実に戻された。
何せ標高7000mという極限地帯で大の男を1人担いで山を登っていく羽生。
一方で標高3500mでほぼ手ぶら状態で歩いているのにぜぇぜぇ言ってる僕。
現実と理想の標高差がヒマラヤくらいあるので、変な妄想はさっさとやめることにした。
山登りも人生も大事なのは、歩き続けることだ。
ペースは人より遅くてもいいし、きつかったら休んでもいい。
でも歩くのだけはやめてはいけない。ゆっくりでいいから前に進んでいく。
歩くのをやめなければ、どんなに遅くても必ず目的地に到着できるから。
辛くなったら後ろを振り返えればいい。
どんなにゆっくりでも、確実に前に進んでいることがわかるから。
そんなことをクソ真面目なことを考えながらも、身体はハンパなくきつい。
もしかしたらこのトレッキングの中で一番きついかもしれない。
それでも一歩ずつ足を前に運んでいると、ついに目的地のM.B.Cが現れた。
ゴールさえ見えれば頑張れる。
大事なのはゴールが全然見えない時にどれだけ頑張れるかだ。
遥か遠いゴールを目指して、歩き出すことができるかだ。
標高3700m。富士山とほぼ同じ高さのM.B.Cに到着
遂に到着。標高3700m。
日本の最高峰、富士山とほぼ同じ高さ。ちなみに富士山はネパールだと「山」じゃなくて「丘」だ。
「日本で一番高い山は何メートルでしょう?」ってネパールの人に聞いて、答えを言ったときのあの驚き。
「日本には山がないんだね」って言われた時の衝撃を僕は忘れない。
この山国では標高が5000mを超えないと山として扱われない。
可哀想な富士山。
日本に生まれてよかったね。
出発して約4時間。ほぼ予定通りに今日の宿に到着。
空は晴れてるようなのに、すっかり霧に囲まれてしまい、まるで雲の中にいるようだ。
標高が高いからか、なんだか頭がぼーっとする。
これが悪化すると高山病にならのだろう。
高山病を心配してか、宿の食堂で2人組のオーストラリア人男子がネパール人ガイドに「吸引できる酸素はここにあるの?」と聞いていた。
標高が高くて酸素が薄い現状を危惧した至極真っ当な質問だ。
高山病が心配だから、僕もその質問に対しての答えが知りたい。
ナイス質問!と思っていたら、回答もナイスすぎるものだった。
「酸素は大丈夫。そこら辺にちゃんと植物が生えてるから!」
オーストラリア人男子たちの困った顔が忘れられない。
不安が消えるどころか、倍増したわ。
明日はいよいよこのトレッキングの最終目的地A.B.C。標高は4000m超え。
Day6に続く。
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