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ナマステ!
標高4,130mまで登った7泊8日のヒマラヤトレッキング体験記。
前回までの体験記はこちら。
遂にゴールのアンナプルナベースキャンプ(A.B.C)へ!
標高も4000mを超えた世界。
果たして無事目的地まで到達できるのか?
朝4時起き!満点の星空の下、ゴールA.B.Cへ向けて歩き出す
昨日の夕方から頭が少し痛くなった。
ガイドのアティットに聞いてみたら、恐らく高山病ではなく、冷たい風に当たったからだとのこと。
帽子をかぶらず、頭が冷たい風に当たると痛くなってくるらしい。
そんなこと、聞いたこともなかったけど、まあガイドが言うんだから本当だろう。
普通の頭痛薬とガイドおすすめのガーリックスープを飲んで19時半に寝る。
その甲斐あってか、今朝はスッキリ起きることができた。
頭痛は少しあるものの、昨日よりはだいぶいい。
ちなみに、昨日の夕方に見た、マチャプチャレは絶景すぎた。
さすが、M.B.C(マチャプチャレベースキャンプ)。
マチャプチャレのふもとなだけはある。圧巻。すごすぎて鳥肌が立った。
こちらはアンナプルナサウス。
もうここからでもすでにすんごい景色なのに、まだ近づけるのか。
そんな絶景を見た昨日よりもすごいものが今日は見られるんだ。
それもあってか、起きたのは朝の4時。そして4時半に今日は出発する。
このトレッキングの最終目的地アンナプルナベースキャンプ(A.B.C)はここから2時間くらい。
なのにこんなに早く出発するのには理由がある。
朝ヒマラヤが赤く染まる姿をどうしても見たかったのだ。
ネパールのお土産屋さんに売っている美しいポストカードのような絶景を自分の目で見てみたかった。
そのためには、朝4時という超早起きをする必要がある。
さらに最近の不安定な天候を見ていると、10時前くらいから霧が発生し、ヒマラヤが全く見えなくなる。
ヒマラヤが見えないA.B.Cなんてただの空気が薄い寒い場所でしかない。
そんなわけで4時半に出発することにしたのだ。
なのに、4時25分になってもアティットとポーターのスージャンが一向に姿を現さない。
こりゃ寝てんじゃねえかと思ったら、案の定スヤスヤ寝ていたので叩きおこす。
ガイドとポーターが客に起こされる国なんてネパールくらいだろう。
予定時間を5分過ぎたものの、無事出発。
満天の星空とはこのことを言うんだなというくらい、空には星が溢れている。
空気も澄んでいてこれはいい天気になりそうだ。期待大。
星空の写真を何回か撮ってみたけど、一眼でも映らず。
きっと撮り方があるはずだから、調べておけばよかったと少し後悔。
でも、こうやって目に焼き付けておくのでも十分か。
どんな写真でも、自分の肉眼に映る目の前の光景には勝てない。
シャッターを切ることに夢中になりすぎると、案外記憶には焼きつかないものだ。
気温は何度か分からないけど体感では0℃くらいだろうか。
上はTシャツ、ヒートテック、セーター、ウルトラライトダウン。
下は股引とスキー用の厚めのズボンを着ているので、ちょうどよい。
それにしても真っ暗だ。いくら星がこれだけあっても暗すぎる。
カトマンズも街灯がないから夜は暗いけど、ここまでじゃない。
これじゃ危なくて歩けないのでiPhoneのトーチをつけて歩き出す。
溢れんばかりの星空を眺めながら歩くなんて、このトレッキングの最終目的地にふさわしい。
道は緩やかな登り道が続いているが、起きたばかりってのと、標高4000m近い高所ってことが影響し、またすぐ息が切れてしまう。
少し立ち止まり、また歩き出すことを繰り返す。
聞こえるのは近くで流れる川の水の音と自分の呼吸音。たったそれだけ。
見えるのはライトで照らした自分の足元と溢れんばかりの星。たったそれだけ。
なかなか神秘的な時間だった。
歩き続けて6日目。ついに目的地A.B.Cへ到着
道が真っ暗でよかったことがある。
それは、前が見えなくて、目の前の登り道の傾斜がよく分からないことだ。
標高が4000m近くになっているので、酸素は地上の約60%しかない。
だから緩やかな傾斜でも登り道がきつい。
そして、それが目の前にずっと続いていると心が折れそうになる。
無理なのは承知だが、江の島にあるようなエスカーがあればと妄想してしまう。
そんな心境なのに、不思議と逃げて帰ろうとは全く思わない。
目の前に広がる絶景を肉眼に焼きつけたいっていう欲求が勝つ。だからまた歩き出す。
なぜ山に登るのかという問いに対し「そこに山があるから」と答えた名言がある。
今までは何を意味わからんこと言ってるんだろうって思ってた。
でも、今は少しその気持ちが分かる気がする。山に吸い寄せられてる感じがする。
でも実はこれは、日本でも有名だけど、誤訳らしい。
正しくは「山があるから」とのこと。なんかしっくりこない。日本語的には「そこに」がついたほうが名言感は出る。
1時間近く歩いて5時半。
空が少しずつ明るくなり星たちが見えなくなってきた。
代わりに姿を現したのはヒマラヤだった。
前を見ればアンナプルナサウス。
後ろを振り返ればマチャピチュレ。
2つの聖なる山に温かく見守られながら、目の前の道を登っていく。
顔を上げると、1つの小さな明かりが見えた。
ゴール、A.B.Cの宿の光だった。
息をぜぇぜぇさせながら、その光を目指して一歩ずつ進んでいく。
もうiPhoneの灯りもいらない。
それがなくても道がはっきり見えるようになった。
ゴールまでの道のりも明らかに。近いようで、意外に進まない。
気持ちは前にどんどん進みたいのに、身体がついていかない。
そんなアスリートみたいなことを言ってみるが、僕はただのアラサー男子だ。
たるんできた腹の肉を気にしつつ、着ていたセーターとヒートテックを脱いで、身軽になって歩いていく。
もう少し。A.B.Cは目の前だ。
そうして6時頃。
遂に目的地のA.B.Cに着いた。
ヒマラヤの麓で織田を叫ぶ!(絶景写真・動画有)
標高4130m。ついにここまで来たのか。
感慨深い気持ちで後ろを振り返ると、とんでもないことに気づく。
前後左右。360°。8000m級のヒマラヤの神々の山嶺に僕は囲まれていた。
イメージはこんな感じ。特別に動画でお届けしよう。
A.B.Cまでのトレッキングコースは別名アンナプルナ内院コースと呼ばれている。
まさにその通りだと思った。
サンクチュアリ。聖なる場所。今自分が立っているここにふさわしい名前だ。
いよいよ太陽が昇ってきた。
ただでさえ神々しいヒマラヤの山々をさらに美しく、赤く照らしていく。
まさにポストカードの写真の景色だ。
絶景。この言葉はこの景色のためにあると言っても過言ではない。
青と白と赤。
突き抜けるような青い空と、雪化粧した白いヒマラヤが太陽で赤く照らされていく。
織田裕二さんがその昔、世界陸上で「地球に生まれてよかったー!」と叫んでいたが、その言葉をこの瞬間だけお借りする。
「地球に生まれてよかったー!」
自分がここで今生きていることに素直に感謝したくなるような光景。
本当にすごいものを目の前で見ると、人間は生きていることに感謝したくなるのだと初めて気づいた。
もうここからは僕の文章であれこれ言うより、素直に写真を見てほしい。
この絶景が見られなくなるかもしれないという衝撃の事実
僕らが行ったときはまだ10月初め。
これが12月など本格的な冬になると、今草が生えているところもすべて雪に覆われる。
それもまた見てみたいなと思いつつ、凍えるような寒さが待ち受けていることを思い出してゾッとした。
もう1つ、アティットが教えてくれたこと。
それは、もしかしたらこのA.B.Cが10~20年後にはなくなってるかもしれないということ。
この写真にもある、山の麓の灰色の部分。
ここは冬になると氷河になる場所らしい。
そして、この氷河が年々広がっていて、アンナプルナベースキャンプの宿のエリアにどんどん近づいているとのこと。
溶ける氷の量が増えていることが原因だとするなら、叫ばれている地球温暖化とも無関係ではないだろう。
10年後も、20年後もここで、織田裕二さんのセリフを叫べるようにするためにはどうしたらいいのか?
このヒマラヤトレッキングの環境保全に関する問題点も、この体験記の中でこれから紹介していきたい。
ヒマラヤを見つめていたら4時間が経っていた。再びM.B.Cへ
結局、A.B.Cには気付いたら4時間もいた。
いくら見ても飽きることのない景色を楽しんでいたら自然とそれだけ時間が経っていた。
再びマチャプチャレベースキャンプ(M.B.C)へ向けて歩き出す。
きつそうに登っていくトレッカーを見ると、絶景が待ってるから頑張れと言いたくなった。
登りがあれだけきつかったのに、宿までは結局1時間足らずで到着。
雨が降ってきたのを見て本当に幸運だったと心から実感。
ありがとう。
いよいよ明日からは来た道を戻る帰り道だ。
楽勝だと思ってたこのときは、とんでもないきつさが待ち受けているとは思いもしなかった。
Day7に続く。
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