なお(編集長)
アジアの政治を勉強している大学5年生。
1度ネパールに訪れて以来、ネパールにどハマり中。
10ヶ月のフィンランドに留学後、ネパールで10ヶ月間インターンとして活動していた。
現地の人と話したい一心で、ネパール語を勉強している。
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モイ、ナマステ、こんにちは!
フィンランドからネパールにやって来たなおです。
私がネパールに訪れるきっかけとなったのは
2015年の大地震でした。
ネパール大地震から2年半。
・旅行に行っても大丈夫?
・ネパールのためにできることは?
など様々な疑問や不安を持っている人も多いと思います。
今回は、地震から2年半経った、首都カトマンズの「今」を、在住者の私がレポートします。
ネパール大地震とは?マグニチュード・震度・死者数・震源地など概要まとめ
2015年、大きな地震がネパールを襲いました。
■マグニチュード:7.6
■震度:カトマンズ盆地 5弱〜6弱 (推定)
■震源:ゴルカ郡 バルパック村付近(首都カトマンズから北西へ約81km)
震源がゴルカという地域であったことから、『ゴルカ地震』とよく呼ばれます。
以下に、被害の概要を表にまとめました。
被害 | 統計 |
死者 | 8,896人 |
行方不明者 | 198人 |
負傷者 | 22,302人 |
被害家庭 | 886,456家庭 |
避難家庭 | 649,815家庭 |
全壊 | 604,930戸 |
半壊・一部損壊 | 288,956戸 |
被害総額 | 70.6億ドル |
人的被害に加えて、建物の損壊も激しく、甚大な被害を受けたことがわかると思います。
日本でも当時はメディアで取り上げられていたので、ネパールの有名な建築物が崩れていく映像を見たことがある人もいるのではないのでしょうか。
この大地震ではマグニチュード6レベルの大規模な余震が長く続いていたことも特徴です。
2015年5月12日にはマグニチュード6.8という大きな余震が、すでに壊滅的な被害を受けていたネパールを襲いました。
この余震だけでも、100人以上がなくなったと言われています。
2015年のネパール大地震直後の様子
2015年地震後の様子はこちら。
当時は、建築基準を満たしていない建物も混在していたため、パンケーキのように建物が丸々つぶれてしまったり、隣の建物に寄りかかる形で傾いたりという状況でした。
特に、タメル地区から少し外れたバスパーク周辺は、カトマンズの中でも最も被害を受けた地域だったそうです。
カトマンズー地方間の長距離バスが出ているバスパーク。
バスパーク周辺には出稼ぎ労働者のための安い宿がたくさんありました。
安い宿=脆く、古い建物。
それらのほとんどが、全壊状態だったそうです。
建物が脆く、古い上に、3階以上の高い建物が多い。
さらには建物が密集していて、道幅が狭い。
大きな揺れとそのような状況が重なって、被害が増大したと考えられます。
カトマンズもかなりの被害を受けていたことがわかりますね。
私がネパールに来たのは、地震から1年経った後だったので、地震直後の写真を見てとても衝撃を受けました。
一方で、観光客の集まるタメル地区では
比較的被害は少なかったそうです。
また、地震が起こったのは4月25日土曜日。
学校はお休みでした。
ネパールでは8000校以上の学校が被害を受け、全壊したところも多かったそうです。
子どもたちが学校に登校していなかったことは不幸中の幸いでした。
なかなか進まないネパール地震からの復興。その背景には何があったの?
私は日本にいるとき、「ネパールの震災復興はなかなか進んでいない」とメディアで取り上げられているのを見たことがあります。
一体なぜなのでしょうか?
途上国であるがゆえに経済基盤が脆弱だったことは、簡単に予想できるのですが、実は他にも理由がありました。
復興の遅れには、ネパールの歴史と政治が深く関わっています。
少し、歴史からお話しします。
ネパールの政治は、古くは、王様が政治を行う王制でした。
議会が政治を行う民主制に変わったものの、国王のクーデターにより事実上の絶対王制(パンチャヤット体制と呼ばれる)に逆戻り。
そして、再び民主化運動。
このように民主政治と国王独裁を繰り返してきたという歴史があります。
1996年には王制の廃止と世俗国家の実現を目指すマオイストが武装闘争を開始し、広範囲を勢力下に収めていきました。
1996年から2006年までの10年間は、ネパールは内戦状態でした。
2008年5月に連邦民主共和制への移行が宣言され、240年近く続いた王制が廃止されたネパール。
新たに民主的な国づくりがスタートすると思われました。
しかし、ネパールは多民族国家であり、いろいろな党派がいます。
これまでも政治が安定してきませんでした。
もちろん連邦民主共和制になったからといっても政党同士の対立がなくなったわけではありません。
憲法制定議会を開いては、なかなか決定には至らない状況が続いていました。
憲法がない状態で7年が経とうとしていたころ…
2015年4月25日の大地震。
壊滅的な被害を受けたネパールでは、
「これは政党対立をしている場合ではない!復興に集中すべきだ!」
という機運が高まり、憲法制定作業が急ピッチでおこなわれました。
そして、2015年9月20日に新憲法制定。
憲法が制定され、震災復興に注力できるかと思われましたが…
ここは多民族国家ネパール。
憲法の内容に対し不満を持った人たちがいました。
マデシ(インド系ネパール人)の政治勢力です。
ネパール南部に住む彼らは、インド国境から首都圏にいたる通商路を遮断するなどの交通ストライキを行いました。
それに対して黙っていないのが、お隣の大国インド。
インドは国境付近の治安対策を理由にネパールに対して物流規制を行ったのです。
事実上、国境封鎖です。
多くの物資をインドからの輸入に頼っていたネパールは混乱に陥りました。
燃料、医薬品、生活物資の不足。
こんな状態が5ヶ月間も続き、国民の生活は疲弊していきました。
1日のほとんどが停電、ガソリンがないから車も大変。
長期にわたる政治的混乱と脆弱なガバナンス、大地震による多数の人命と経済基盤の損失、さらにはインドによる物資規制のトリプルパンチ。
ここまで被害が大きくなり、復興も遅れているのは、ネパールの歴史的・政治的要素が絡まり合っているからなんです。
地震・インド国境封鎖による経済的打撃はとても大きかったことを、数字でも見てみましょう。
2013年度(2013年7月〜2014年7月)の経済成長率は5.7%でしたが、
2014年度(2014年7月〜2015年7月)には2.3%、
2015年度(2015年7月〜2016年7月)には0.77%まで落ち込みました。
(Economic Survey2016, ネパール財務省)
復興に集中するため憲法制定を急いだのに、逆に、政治的混乱を大きくしてしまった。
そのせいで、地震の被害に加えてさらなる経済的打撃も受けてしまった。
ここまで被害が拡大し、復興に時間がかかっているのは、ある意味“人災”という側面も大きいのではないでしょうか。
ネパール大地震から2年半。2017年11月のカトマンズの現在と復興状況
①建物
とはいえ、復興が遅いと書きましたが、まったく進んでいないわけではありません!
震災から2年半経った、現在のカトマンズの様子です。
今、被害の跡を感じることは少ないですが、話を聞いてみると
「ここは4階建てだったけど、地震後2階建てにしたんだよ。」
というところもたくさんありました。
この空き地にも建物がありました。
地震後には建築基準が厳しくなり、新しく建てるものは新基準に従って建設されていました。
この写真では、しっかり鉄筋が入っていることが確認できると思います。
被害が大きかったバスパーク周辺は、新しい建物がある一方で、瓦礫がそのままの場所も。
あまり表には見えないですが、1本路地を入ってみると地震後から時が止まっているような場所もありました。
タメルなどの観光客が多いエリアは被害も少なかったこともあり、復興が早く、まったく問題ない状態に戻っています。
特に、今の時期は観光客で賑わっています!
旅行するのには全く問題ありません!!!
世界遺産や歴史的建造物も大きな被害を受けましたが、修復作業がかなり進んでいます。
ただ、カトマンズのダルバール広場など一部の建物はまだ修復が終わっていないところもあります。
元どおりのものを見られない可能性はありますが、今のネパールの姿をあたたかく見守っていただければと思います。
また、もともと道路や建物の開発工事が行われていたうえに、復旧工事が加わって砂埃はかなり多いです…
大通りに出るときはとくに、マスクをつけるのをお忘れなく!
②人々の生活
建物の復旧とともに大切なのが、人々の生活。
これは、1年前に訪れた避難キャンプの写真です。
カトマンズ中心部からボダナートに向かう途中にあります。
日本では地震などの災害発生時、学校などが一時避難所になり、その後仮設住宅に移るということが多いと思います。
しかし、ネパールでは政府がそこまでお金を出すことができない…。
キャンプがあるところは、災害などの緊急時に使う政府の土地だそうですが、なかなか日本の仮設住宅みたいにできないのが現実です。
ビニールシートとトタンでつくったようなところに住むしかないのです。
夏はかなり暑く、冬は凍える寒さ。
ビニールハウスを想像してもらったら、その環境の悪さがわかると思います。
当時会った人たちのことがずっと気になっていたので、キャンプがあった場所に行ってみました。
キャンプはすっかりなくなっていました。
ひとまず、胸をなでおろしました。
あの悪環境の中での暮らしが続いていなくてよかったと思いました。
しかし同時に、みんなどこに行ったのだろうと不安になりました。
というのも、1つの家族ごとに家を再建する補助金を国から出すという計画はあるものの、スムーズにお金を渡せているというわけではないと聞いていたからです。
全員が無事に安全な場所に移れたことを願うしかありません。
仕事があり、収入がある人は銀行からすぐにお金を借りることができますが、もともと厳しい生活をしていた人はお金も借りられない。
でも、家を壊すのにもお金がかかる。
カトマンズから田舎に帰らざるをえない人も少なくないという話も聞きました。
その田舎も大きな被害を受けているところが多いです。
元どおりの生活ができていない人も多いんじゃないかなと思います。
また、ネパールは海外への出稼ぎ労働者が多い国です。
実は、ネパールの国内総生産(GDP)の約3割は海外からの送金。
南アジアの国々でもここまで海外送金に依存している国はないです。
それに加えて、2015年の地震後多くの人が仕事を失いました。
ネパールで仕事がない人々は海外に行くしかありません。
被災地ではそういった人の流出が加速していることも問題になっています。
こんな厳しい環境のネパール。
でも、ネパールにはそれを感じさせない“強さ”があるんです。
ネパール人には助け合いの精神が強く根付いています。
誰かが困っていたら、知らない人でも手を差し伸べる。
親戚や友達が困っていたら、お金を貸す。
それは、ネパール社会では当たり前。
政府ばかりにたよらず、自分たちで頑張ろうという雰囲気もここから生まれているのかなと思いました。
(政府をあてにできないというのが本音でもあるんですが。)
そんなネパールのことを応援したいな、と思っています。
日本人の私たちにできることは「ネパールに行くこと」
わたしもネパールに住んでもうすぐ3ヶ月になりますが、地震の影響を感じることはほとんどありません。
でも、よくよく見てみると地震の傷跡があります。
まだまだ復興には時間がかかるというのが現状です。
ネパール政府は、日本とも協力しながら、“Build Back Better よりよい復興”を目指しています。
こちらはJICAが推進している取り組み。
地震から2年半しか経っていないことを感じさせないくらい、ネパールは活気を取り戻しています。
ネパール人は、いつもあたたかく私たちを迎えてくれます。
ネパール人は本当に強い。
そんなネパールのために私たちには何ができるでしょうか?
一番は、『ネパールを訪れること』。
観光業は、ネパールにとって重要な産業の1つです。
地震によって激減してしまった観光客も徐々に戻りつつありますが、まだまだ完全には戻っていません。
先に書いたように、旅行するのには全然問題ありません!!
ネパールに足を運ぶ人が1人でも多くなれば、必ず復興にプラスになります!
ネパールは本当に魅力いっぱいの国です。
たくさん観光して、たくさんネパールの料理を堪能して、たくさん買い物をして…特別なことをしなくてもいいんです。
ただ、足を運んでみる。そして、思いきり楽しむ。
それだけで、ネパールのためになるんです。
もちろん、募金をする、チャリティイベントに参加する、ボランティアをするなどできることは他にもたくさんありますよ。
みんなでネパールを応援していきましょう!
ネパールが少しでも早く復興できますように。
みなさんもこの景色と笑顔にぜひ会いに来てください♪
※地震からの復興は確実に進んでおりますが、次の地震が来ないという保証はどこにもありません。
安全かどうかの最終判断はご自身で行なっていただきますようお願いいたします。
(判断の材料となる情報は、随時更新していきます!)
ネパールだけではありませんが、旅行中も万が一の備えや危機管理はしっかりしてくださいね!!
ネパールを旅行するなら「たびレジ」への登録をしておこう!
ネパールは犯罪などは少ないのですが、結構突発的な事故やストライキが起きたりします。
なので対策として、「たびレジ」に登録しておきましょう。
これは外務省が提供している海外の安全に関するサービス。
先程紹介したような安全情報に関するメールが、在ネパール日本大使館から届くようになります。
特にバンダ(ゼネラルストライキ)は現地のネパール人でさえ予定を知らないことが多いです。
そういう意味では、大使館からのメールはかなり重宝しますよ。
登録手続きも超簡単!
メールアドレスを登録するだけですので、1分もあれば終わりますよ。
ホームページはこちらです。
重要な情報をしっかり入手して、ネパール旅行を楽しみましょう!
ちなみに、ネパールの治安に関する7つの知識はこちら!
なお(編集長)
アジアの政治を勉強している大学5年生。
1度ネパールに訪れて以来、ネパールにどハマり中。
10ヶ月のフィンランドに留学後、ネパールで10ヶ月間インターンとして活動していた。
現地の人と話したい一心で、ネパール語を勉強している。
ブログやってます!
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